『グロース株とバリュー株、今、どちらに投資するべきなのか?』
株初心者の方をはじめ、相場の変化に応じてポートフォリオを見直す熟練投資家の方も、この疑問に関して時間を割いたことが一度はあるのではないでしょうか?
この疑問、「成長期待度が高い」×「安い株価で買える」、対極な存在として見られている”成長株”と”割安株”、この両方のメリットを備えた銘柄があれば解決できるはず。それが「割安成長株」です。
では、「割安成長株」にはどのような魅力が秘められているのか?メリットとデメリットをはじめ、「PEGレシオ&PSR」といった指標を使った見つけ方、PEGレシオを活用した「割安成長株ランキング」をご紹介します。
急動意が期待される必見の注目株とは?
割安成長株とは?
割安成長株とは、高い成長性を秘めていながら割安な株価水準のまま放置されている銘柄のこと。一言でいうと「割安性」と「成長性」の2つを合わせもつ銘柄です。
では、この割安成長株とはどのような銘柄なのか?コロナの影響を乗り越えV字回復を見せる「ビーロット」、上場から僅か1年足らずで「株価26.6倍!」の急成長をみせた「AI inside」を例に、その特徴とメリット・デメリットをご紹介します。
「好業績」なのに「低PER」の割安な状態にある成長株
なぜ、高い成長性を秘めているのに株価が割安なまま放置されるのか?
大きな要因は「市場がその成長性にまだ気づけていない」から。たとえば、強い競争力と成長性をもっているにも関わらず、マーケット全体が大きく下げたことで株価が下に引っ張られた状態にあったり、流動性の低い小型株のため注目度が低いなど、さまざまな要因が考えられます。

では具体的に、どのような銘柄が割安成長株なのか見てみましょう。
ビーロット(3452)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | ROE | PER |
---|---|---|---|---|
2020年12月期 | 26,481 | 1,033 | 4.26% | 29.92倍 |
2021年12月期 | 14,751 | 1,501 | 10.24% | 9.86倍 |
2022年12月期 | 19,911 | 2,415 | 14.52% | 6.47倍 |
2023年12月期 | 23,510 | 4,945 | 24.78% | 5.58倍 |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
※PER:各期末の実績値より求めた数値
市場 | 東証スタンダード |
時価総額 | 236億円(2024.11.13時点) |
業種 | 不動産業 |
テーマ | 不動産投資、不動産再生、中古マンション再生、コンサルティング、ビル賃貸、ホテル、ビルメンテナンス |
ビーロットは、不動産投資開発事業を主体に、仲介・コンサルティング、賃貸管理など多彩なビジネスモデルを展開する企業。2014年12月11日に東証マザーズ市場(現:グロース市場)に上場、その後、2023年10月20日に上場市場区分を東証スタンダード市場に変更されています。
コロナの影響を乗り越え2021年以降はV字回復。親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高となる「32億円超」
2023年12月の連結業績では、売上高・営業利益・経常利益いずれも2ケタ増収とともに大幅な増益を達成。親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高となる「32億円超」、富裕層向けハイスペック商品の売却が好調で、宿泊系不動産の賃料収入など安定収入も伸長。
割安度を測るPERでみると「5.58倍」と推移。2023年の不動産業のPER平均値が「11.31倍(中央値:8.17倍)」なので、割安な株価水準と評価することができます。また、自己資本比率が「25.60%」、ROEが「24.78%」と財務体質の安全性が向上していることも注目ポイント。
ご紹介した「ビーロット」は、堅調に推移する業績の伸びとPERの低さから「成長性&割安度」を評価できたパターンですが、必ずしも全ての銘柄に同じ評価ができるわけではありません。
とくに、成長スピードが速いグロース株を中心にみると、PERだけで「割安」or「割高」と判断できないため、「PSR(株価売上高倍率)」に対して「売上高成長率・営業利益率」を加味した評価などを参考にします。
割安成長株のメリット・デメリット
メリット
- 成長と割安性を兼ね備えている:高成長が期待される一方で、株価が割安なため、上昇余地が大きい。
- リスクが相対的に低い:割安な評価を受けているため、成長株の中でも急落リスクが抑えられる可能性がある。
- 長期投資で高リターンが期待できる:持続的な成長があれば、株価の上昇に伴って資産形成が可能。
- 分散投資に最適:割安成長株は市場で注目されていないことも多く、他の成長株と組み合わせることでリスク分散が可能。
- 景気回復局面での値上がりが期待できる:景気が回復する際に見直されやすく、値上がりが期待されることが多い。
デメリット
- 成長が見込めないリスク:割安なまま成長が伴わない場合、株価が低迷し続けるリスクがある。
- 情報が少ないことがある:市場で注目されていないことが多く、情報収集が難しい場合がある。
- 業績の安定性に欠ける可能性:成長が不安定な場合や業績のブレが大きい場合、投資リスクが増す。
- 短期でのリターンは期待しにくい:割安株は市場で注目されにくいため、株価上昇に時間がかかることがある。
- 割安の理由が明確でない場合も:なぜ割安かが明確でない場合、隠れたリスク要因がある可能性がある。
割安成長株の「魅力」と「危険性」を表した事例「Ai inside(4488)」
割安成長株のメリットとデメリットを語る上で、その魅力と危険性を分かりやすく形にした事例があります。AI insideの急成長と大暴落です。
AI insideは、2019年12月25日に東証マザーズ市場(現 東証グロース)に上場したAIプラットフォームを手掛ける企業。申込書や請求書などの各種書類を高精度にデジタルデータ化する「AI-OCR」分野では、国内市場でトップシェアを誇ります。
IPO初値騰落率「+250%」、上場から僅か1年で株価は「26.6倍」に急成長!

出展:TradingView
急成長を続けるSaaS市場において、AI insideの成長率はライバル企業を圧倒する水準で伸ばし、2020年11月16日上場来高値の「96,000円」に到達。上場から僅か1年で株価「26.6倍」を達成しました。
SaaS企業の成長性を測る判断指標は「40%」が目安とされていますが、AI insideは「222%」というライバル企業を大きく引き離す圧倒的な水準。また、グロース株の割安度を測る「PSR(株価売上高倍率)」でみると「70倍」と割高に見えるものの、売上高成長率と営業利益率の伸びを加味すると「割安」と評価することができます。
時価総額(2020.11.17) | 売上高(2021.3期予想) | PSR |
---|---|---|
3,100億円 | 44億円 | 70倍 |
①売上高成長率(予想) | ②営業利益率(予想) | ③合計(①+②) | PSR / ③合計 |
---|---|---|---|
+181% | 41% | 222% | 0.31 |
「NTT解約ショック」で売上高の4割が蒸発。株価は大暴落!

出展:TradingView
大躍進を遂げていたAI insideでしたが2021年4月28日、パートナー契約を結んでいたNTT西日本がライセンス契約の一部を更新しないと通知。この通知を受けAI insideは、2022年3月期には17億6,300万円の売上が減少する見込みを発表しました。
この発表を嫌気した売りが殺到して株価は急落。3営業日で50%超の大暴落を引き起こす事態となりました。
このように、割安成長株にも当然メリットとデメリットがあり、AI insideのように株価の変動幅が大きくなる場合があるので注意が必要です。
持続的な成長が期待されているうちは株価の上昇に伴う大きなリターンが狙える一方、期待が大きく外れたり成長スピードに限りがみえてしまうと急落のリスクがあることを覚えておいてください。
割安成長株の見つけ方
これから値を上げる「割安なお宝成長株」をどのようにして見つけるのか?
一般的には、成長性と株価指数から「売上高成長率●%以上」や「PER●倍以下」といった見方がされていますが、上場したての新興企業や成長スピードの早いグロース株を対象とした場合、PERやPBRだけで「割高」or「割安」と判断することができません。
そのため、「PEGレシオ」や「PSR(株価売上高倍率)」といった指標をつかって、成長性と割安度を評価します。
PEGレシオ
PEGレシオ(ペグ レシオ)とは「Price Earnings Growth Ratio」の略で、企業の中期的な利益成長率を加味して株価の水準を測る指標のこと。「PEGレシオ = PER ÷ EPS成長率」といった計算式で求めることができます。
PEGレシオの大きな特徴は『将来の成長性から株価の割安度を測れる』こと。
たとえば『PERだと”割高”に見えるが、将来的な利益の成長度を加えると”割安”と評価できる。』といった、「PER」や「PBR」だけでは評価できないグロース株の割安水準を測るのに役立てることができます。
PEGレシオの計算方法

PEGレシオは、「PEGレシオ = PER(株価収益率) ÷ EPS成長率(1株当たりの利益成長率)」といった計算方法で求めることができ、PEGレシオが「1」を下回ると”割安”、「2」を上回ると”割高”と判断されています。
ただし、PERのレンジや成長率は業種によって大きく違うため、業種別の平均値や中央値を参考にしたり、同じ業種のライバル企業と比較するのが有効な使い方です。

PSR(株価売上高倍率)
PSR(ピーエスアール)とは「Price to Sales Ratio」の略で、企業の売上高を基準にして株価の割安度を測るのに使われる指標。日本語で「株価売上高倍率」とも呼ばれ、「PSR = 時価総額 ÷ 売上高」で計算できます。
PSRの大きな特徴は『スタートアップ企業や成長途中にある新興企業の割安・割高を判断するのに適している』こと。
スタートアップ企業の多くは、事業がまだ軌道に乗っておらず先行投資を優先するため、利益が残らず赤字になったり純資産が少ないというケースも多いです。この場合、利益や資産をベースとする「PER」や「PBR」では適正な評価ができません。
一方で、PSRは利益ではなく売上高を基準にするため、利益の少ない企業や赤字企業でも株価水準を評価することができるのです。
PSRの計算方法

PSRは、「PSR = 時価総額 ÷ 売上高」、もしくは「PSR = 株価 ÷ 1株あたりの売上高」といった計算方法で求めることができ、PSRの数値が低いほど”割安”、高いほど”割高”といった見方ができます。
また、一般的な目安として「20倍以上」が割高、「0.5倍以下」が割安とされています。
ただし、PSRの数値は業種や業態により利益率の違いに影響します。そのため、PSRを利用する際には業種別の平均値や中央値を参考にしたり、同じ業種のライバル企業と比較するようにしましょう。

このほか、「成長性」と「割安度」に注目して銘柄を見つける方法はさまざまです。各株価指標の組み合わせやスクリーニング条件など、下記のページでも掲載しています。こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
CHECK!
割安成長株ランキング
最後に、これまでご紹介してきた「成長性」と「割安度」を測る各指標をもとに、スクリーニング機能を使って「割安成長株」を抽出。今回はPEGレシオを軸にしたランキング形式でご紹介します。
- 業種:通信業
- PEGレシオ:1以下
- 売上高変化率:20%以上
「PEGレシオ」で発掘する!割安成長株ランキング

いかがだったでしょうか。
今回ご紹介した割安成長株のスクリーニング条件、またランキング順位についてはあくまで参考情報です。
業種による絞り込み条件、個別にピックアップした銘柄を「PSR」で比較したり、「売上高成長率」や「営業利益率」の評価を加えてみるなど。組み合わせ次第でさまざまな見方をすることができます。
まとめ
割安成長株とは、高い成長性を秘めていながら割安な株価水準のまま放置されている銘柄のこと。”成長性”と”割安性”の2つを備えた「お宝銘柄の代表格」です。
この割安成長株を見つけるには、売上高成長利やPERの倍率を参照するのが一般的な考えですが、上場したての新興企業や成長スピードの早いグロース株を対象とした場合、「PEGレシオ」や「PSR(株価売上高倍率)」を活用します。
今回ご紹介した記事を参考に、ご自身の投資スタイルにあった「割安なお宝グロース株」の発掘にぜひ役立ててみてください。
「 割安成長株 」 について詳しく解説します。