売上や利益の成長スピードを確かな裏付けにして、株価上昇による大きなリターンが期待できる銘柄、それが「成長株(グロース株)」です。
しかし、約4,000社といわれる上場企業の中から、期待値の高い”お宝銘柄”を発掘するのは決して簡単ではなく、業績の伸び率や財務体質の健全性、市場における成長期待や株価の形状など、その見極めにはさまざまなコツが存在します。
では、これから値を上げる「お宝成長株」を見つける方法とは何か?過去、株価を大きく上昇させた「お宝グロース株」を題材にその特徴と見極めポイント、成長株の発掘に役立つスクリーニング条件などをご紹介します。
またページ後半では、テンバガー候補として注目度の高い「小型成長株の見つけ方」についても解説していますので、ぜひ最後までご覧になって下さい。
急動意が期待される必見の注目株とは?
成長株を見極める5つの条件

上昇余地の高い成長株を見つけるにはどのようなことに注視すればいいのか?まず初めに、その特徴を5つの要点に絞ってご紹介します。
- 売上や利益が年々増加している
- 財務体質が健全・安全
- 時価総額が比較的小さい
- 上昇トレンドに入っている
- 成長性の高いテーマ・業種(サービス)に絡む
①売上や利益が年々増加している
まず、大前提となるのが「売上や利益が年々増加していること」です。
業績が継続的に伸びているということは、その企業が手掛けるビジネスモデルがうまく機能していることを示し、将来の業績拡大も期待できるということになります。
主に、企業の業績データから「売上高」と「経常利益」がともに安定して上昇傾向にあると成長性が期待できると判断できます。「グロース株(成長株)とは?メリット&デメリット、バリュー株との違いを解説」でご紹介した、代表的なグロース株「レーザーテック」の業績推移もあわせて参照して下さい。
この他、前期と比べて売上がどれだけ伸びているのか?その企業の成長性を示す基本的な指標として「売上高成長率」で評価することができます。
②財務体質の健全性・安全性が高い
2つ目が「財務体質の健全性・安全性が高いこと」です。
財務健全性とは、資本の調達と運用におけるバランスを測る指標のこと。「どれだけ自分のお金で事業を行えているのか?」を判断するものです。たとえば、負債比率の高い企業の場合、借金返済の負担が大きく将来の成長を妨げる可能性が考えられます。
一方、自己資本比率が高い企業は、「借入に頼らず自己資本だけで経営ができている」と判断でき、財務体質が健全で安全性が高いとされています。
また、財務の健全性や安全性は「ROE(自己資本利益率)」と呼ばれる指標で評価することができ、一般的にはこの数値が高い企業ほど成長が期待できるとされています。
③時価総額が比較的小さい
3つ目が「時価総額が比較的小さいこと」です。
時価総額とは、その企業の「価値や規模の大きさ」を表す指標のことで、「株価×発行済株式数」で計算されます。この時価総額の規模や流動性の高さに応じて「大型株」「中型株」「小型株」に分類されています。
分類 | 時価総額の目安 |
---|---|
大型株 | 1兆円以上 |
中型株 | 1,000億円~1兆円 |
小型株 | 1,000億円以下 |
「時価総額がまだ小さい」ということは、「将来の伸びしろが大きい」と考えることができ、とくに、これから成長期を迎える上場して数年の企業は「期待値が大きい」と評価することができるのです。
また、企業の成長ステージには「創業期」「成長期」「安定・拡大期」「衰退・再成長期」の4つの段階があり、もっとも成長するのが「成長期」とされています。そのため、
- 時価総額がまだ小さく伸びしろが大きい
- 上場から数年でこれから成長期を迎える
成長期待値の高さという側面から、この2点をひとつの目安にすることができます。
④上昇トレンドに入っている
4つ目が「上昇トレンドに入っていること」です。
上昇トレンドとは、株価が直近の高値と安値を切り上げながら上昇している状態のことで、移動平均線が上向きなら「上昇トレンド」、下向きなら「下降トレンド」と判断することができます。
成長株を見分けるのに「株価チャートの形状」も重要なポイントで、
- 移動平均線が右肩上がり
- トレンドラインが右肩上がり
- 株価が移動平均線の上にある
といった上昇トレンドに入っているのも大きな特徴です。
先ほど、企業における4つの成長ステージをご紹介しましたが、成長株の株価チャートにも類似した特徴があり、「黎明期」「急成長期」「成熟期」と段階的な値動きを見せることが多く、文字通り「急成長期」で急速な伸びを見せて上昇トレンドを描きます。
また、急成長期へのトレンド転換には「上場来高値」や「年初来高値」といった節目の更新が起きやすく、分かりやすい”買いシグナル“が買いを誘うことも上昇トレンドを形成する大きなきっかけとなっています。
⑤成長性の高いテーマ・業種(サービス)に絡む
5つ目が「成長性の高いテーマ・業種(サービス)に絡んでいること」です。
たとえば、インターネットの誕生に匹敵するほどの大きなインパクトを与えた成長産業「生成AI」、エネルギー安全保証や脱炭素の観点から世界的な国策テーマとして取り組みが加速する「再生エネルギー」など、成長性の高い市場・産業に注目するのも大切です。
ただし、新規参入が比較的容易にできてライバル企業がどんどん増えてしまうような市場は注意が必要で、過当競争が進んでしまうと成長に陰りが見え始めて長続きしません。そのため、「参入障壁の高さ」や「市場シェアの高さ」も重要な見極めポイントといえるでしょう。
過去の事例で分かる!有望なお宝グロース株の特徴
先ほどご紹介した成長株の見極めポイントを踏まえて、急成長を果たしてきたお宝グロース株の特徴をみてみましょう。
代表的な大型グロース株
レーザーテック(6920)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年6月期 | 70,248 | 26,438 | 46.50% | 40.82% |
2022年6月期 | 90,378 | 33,582 | 40.70% | 38.86% |
2023年6月期 | 152,832 | 63,668 | 40.20% | 50.77% |
2024年6月期 | 213,506 | 82,021 | 55.80% | 45.37% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
市場 | 東証プライム |
時価総額 | 2兆2,006億円(2024.10.30時点) |
業種 | 電気機器 |
テーマ | 半導体製造装置、EUV、液晶製造装置、LED製造装置、携帯電話関連、その他太陽電池関連、パワー半導体、半導体、HBM、グローバルニッチ、試験・検査・計測、電気機器、JPX日経400、JPXプライム150 |
レーザーテックは、半導体関連装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)関連装置などを開発・製造・販売をする企業。いわゆる「大型成長株」に分類する銘柄です。
最大の強みは、最先端の半導体製造技術「EUV(極端紫外線)向けの検査装置」で100%のシェアを握っていること。また、TSMC、インテル、サムスン電子など海外の主要半導体メーカーが取引先で、海外展開にも成功しています。
- EUV光源を使ったマスク欠陥検査装置で100%のシェアを握る。
- 半導体市場の継続的な成長が期待できる。
- 9期連続で過去最高益を更新する見通し。(12期連続で「増収」、9期連続の「増益」)
マツキヨココカラ&カンパニー(3088)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 544,737 | 34,140 | 66.70% | 9.09% |
2022年3月期 | 729,969 | 44,565 | 70.50% | 9.74% |
2023年3月期 | 951,247 | 66,721 | 70.10% | 8.60% |
2024年3月期 | 1,022,531 | 80,499 | 71.00% | 10.50% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
市場 | 東証プライム |
時価総額 | 8,679億円(2024.10.31時点) |
業種 | 小売業 |
テーマ | ドラッグストア、大衆薬、化粧品、プライベートブランド、調剤薬局、インバウンド、花粉症対策、インフルエンザ関連、コロナウイルス、COVID-19、サマーストック、厳冬対策、24時間営業、駅ナカ、電子マネー、フランチャイズチェーン、衛生、JPX日経400、JPXプライム150 |
マツキヨココカラ&カンパニーは、「旧マツモトキヨシHD」と「ココカラファイン」の経営統合で誕生した、国内最大級のドラッグストアグループ。売上高では、経営統合が進む「ウエルシア」「ツルハ」に次いで業界3位に位置する企業です。
マツキヨココカラ、最大の強みは「粗利率の高い化粧品と医薬品を軸にした戦略で”業界でも突出した利益率を計上している”」こと。売上高では3位に位置するものの、時価総額の規模では同業他社とは一線を画す圧倒的な水準にあります。
- 国内の最重要マーケット「首都圏中心部」と「京阪神中心部」でトップの店舗網を展開。
- 化粧品など美容関連のプライベート商品を拡充。PB商品の売上が好調に推移。
- 円安進行、インバウンド需要拡大による業績拡大が見込まれる。
いかがでしたか?
代表的な大型グロース株をピックアップしてご紹介しましたが、業績が継続的に伸びていることに加えて、
- 「EUV向けの検査装置で100%シェア」
- 「国内の重要マーケットでトップの店舗網」
いずれの銘柄も、ライバル企業の追従を許さない独自の強さをもっていることが分かります。成長株を見つける際、この「参入障壁の高さ」や「市場シェアの高さ」が重要な見極めポイントになるといえるでしょう。
将来性が期待される小型成長株
次に、今後の将来性が期待される「小型成長株」にフォーカスを充ててみましょう。
- 時価総額が小さく上場から日が浅い
- 業績面の成長性が高い(赤字縮小・黒字転換)
- 市場における独自の強みを持っている
上記の3点からピックアップしました。
ウェルスナビ(7342)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2020年12月期 | 2,516 | -999 | 45.00% | -16.48% |
2021年12月期 | 4,647 | -491 | 36.70% | -5.84% |
2022年12月期 | 6,573 | 214 | 42.30% | 2.75% |
2023年12月期 | 8,167 | 519 | 37.70% | 3.24% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
市場 | 東証グロース |
時価総額 | 654億円(2024.11.06時点) |
業種 | 証券・商品 |
テーマ | 資産運用、投資助言、投資情報、人生100年時代、2020年のIPO |
ウェルスナビは、2020年12月に東証マザーズ(現:グロース市場)に上場した国内のフィンテック企業で、全自動資産運用サービス「WealthNavi」を提供しています。
最大の特徴は「預かり資産・運用者数の両面で”国内No.1ロボアドバイザー”」の地位を築いていること。2024年7月末時点での運用者数は39万人、預かり資産は1兆3000億円を突破。さらに、さらに、ソニー銀行、イオン銀行、SBI証券、三菱UFJ銀行、auじぶん銀行などの大手金融機関との提携により、多様なチャネルでサービスを提供し、成長を続けています。
- 預かり資産・運用者数の両面で「国内No.1ロボアドバイザー」の地位を確立。
- 新NISAスタートをきっかけに「ロボットアドバイザー」利用者が増加。
- 大手金融機関との提携によって更なる成長を後押しする。
タイミー(215A)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2020年10月期 | 461 | -1,196 | – | – |
2021年10月期 | 1,299 | -1,387 | – | – |
2022年10月期 | 6,216 | 114 | 49.80% | 6.04% |
2023年10月期 | 16,144 | 1,924 | 34.70% | 34.09% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
市場 | 東証グロース |
時価総額 | 1,068億円(2024.11.06時点) |
業種 | サービス業 |
テーマ | 求人情報、人材紹介、求人広告、マッチングサービス、働き方改革、2024年のIPO、人材、サービス業 |
タイミーは、スキマ時間を活用した短期アルバイトマッチングサービス「タイミー」を運営する企業。2024年7月に東証グロースに上場した大型のIPO銘柄です。
急速に拡大しているスキマバイト(スポットワーク)市場にいち早く参入したパイオニア的な企業。2023年10月の売上高は「161億円」、流通総額は「545億円」で、売上高成長率でみると「前年比160%以上」と急成長をみせています。
- 拡大が続くスキマバイト市場におけるパイオニア。
- 売上高、経常利益ともに高い成長率をみせる。
- “低原価”と”高テイクレート”による利益率の高いビジネスモデル。
Aiロボティクス(247A)

出展:TradingView
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 1,567 | 94 | – | – |
2022年3月期 | 1,607 | -78 | – | – |
2023年3月期 | 3,645 | 283 | 14.40% | -101.34% |
2024年3月期 | 7,061 | 1,234 | 24.80% | 115.30% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
市場 | 東証グロース |
時価総額 | 302億円(2024.11.06時点) |
業種 | 化学 |
テーマ | スキンケア、美容家電、化粧品、美容、D2C、eコマース、マーケティング、人工知能、2024年のIPO、卸売り、小売り |
Aiロボティクスは、独自開発のAIシステム「SELL」を活用し、AIマーケティングおよびD2C(Direct to Consumer)ブランド事業を展開する企業。2024年9月に東証グロース市場に上場しています。
スキンケアブランドの「Yunth」、美容家電ブランドの「Brighte」を主要ブランドとしたD2Cブランド事業を展開、国内外での事業拡大を進めています。とくに、中国市場における「Yunth」の売上が好調で、多くの販売実績を記録し躍進的に成長したブランドに贈られる「新興ブランド優秀賞」を受賞。国内だけでなく海外展開でも成果を上げています。
- 独自開発のAIシステムを活用したD2Cブランド事業が好調。
- AI技術を活用した新ブランドの立ち上げ、台湾・東南アジアへの進出を計画。
成長株を見つけるための基本的なスクリーニング条件
次に、これまでにご紹介したような成長株をどのようにして見つけるのか?冒頭でご紹介した「成長株を見極める5つの条件」をさらに深掘りして、基本的なスクリーニング条件をご紹介します。
- 売上高成長率:前年同期比で10%以上の増加が続いている
- EPS(1株あたり純利益):前年同期比でプラスが続いている
- ROE(自己資本利益率):8%以上
- PER(株価収益率):30倍以下
- PBR(株価純資産倍率):1倍以上
- 自己資本比率:40%以上
- 時価総額:3,000億円未満の小型~中型株
- 移動平均線:上昇トレンドに入っている
- 成長性の高い市場:IT、バイオテクノロジー、再生エネルギーなど
今回ご紹介したスクリーニング条件はあくまで参考情報です。時価総額の規模で限定した「小型成長株」や割安な株価水準にある「割安成長株」など、条件次第で大きな成果を期待できるお宝銘柄を発掘できるかもしれません。
ぜひ、さまざまな条件を組み合わせた銘柄検索を試してください。
テンバガー(株価10倍)も夢じゃない!小型成長株の見つけ方
最後に、高い成長性と値動きの大きさから個人投資家の注目度も高い、「小型成長株」について、その特徴と見つけ方についてご紹介します。
そもそも「小型成長株」とは?
時価総額が比較的小さく(一般的には数百億円~数千億円未満)、高い成長性が期待される銘柄のこと。新興市場に上場していることが多く、その業界において革新的な技術やサービスを提供している場合が多いです。
小型成長株の特徴
- 高い成長性:売上高や利益の成長率が高く、業界の平均を上回る成長が期待されています。
- 市場の注目度:規模が小さいため、投資家からの注目が集まりやすく、株価が短期間で急騰する可能性もあります。
- ボラティリティ(価格変動)が高い:成長期待が大きい分、株価の変動も大きくなる傾向があります。市場や業績の変化に敏感に反応するため、リスクも伴います。
また、「成長株を見極める5つの条件」でご紹介したように、「時価総額がまだ小さい」ということは「将来の伸びしろが大きい」ということ。これから成長期を迎えて業績拡大に伴って株価の上昇期待値が大きいと見られるのが小型成長株です。
ちなみに、小型成長株として注目を集めた企業の中には、株価を10倍以上に上昇させ「テンバガー(10倍株)」を達成した銘柄も多くあります。
CHECK!
小型成長株の見つけ方
では、期待値の高い小型成長株はどのようにして見つけるのか?
先ほどご紹介した「基本的なスクリーニング条件」をベースに、大きく5つのポイントにまとめました。
売上や利益が伸びているのは絶対条件。「チャートの形状」や「出来高の多さ」、直近の高値更新といった「急成長期へのトレンド転換」に着目するといいでしょう。
まとめ
「成長株の見つけ方」をテーマに、5つの見極めポイントと代表的なグロース株の特徴、基本的なスクリーニング条件などをご紹介してきました。いかがでしたか?
数ある上場企業の中から、大きなリターンが期待できる「お宝成長株」を発掘するのは決して簡単ではありません。しかし、成長性が期待された小型株の中には、株価を10倍以上に上昇させた「テンバガー達成銘柄」が埋もれていたのも事実です。
今回ご紹介した成長株の特徴や見極めポイントを参考に、将来のテンバガー候補の発掘にチャレンジしてみて下さい。
「 成長株の見 つけ方 」 について詳しく解説します。