炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった新素材をつかった次世代半導体の実用化が進む中、”究極の半導体素材”とも称される「ダイヤモンド半導体」の実用化に向けた取り組みが活発なのをご存知でしょうか?
ダイヤモンド半導体は、炭化ケイ素や窒化ガリウムをも凌駕する省エネ性と耐久性をもち、本格的な実用化が進めば「宇宙産業」「量子コンピューター」「電気自動車」「原子力分野」など、さまざまな分野に普及するとされています。
話題の株式テーマに深く関わる技術のため、
『ダイヤモンド半導体の関連株、本命株を今からチェックしておきたい!』という方も多くいるのではないでしょうか?
そこで今回の記事は、「2025年版・ダイヤモンド半導体銘柄」を基本テーマにして、ダイヤモンド半導体の特徴や従来製との違い、実用化へ向けた動きや展望、関連銘柄の一覧・本命株・思惑株など詳しくご紹介します。
ダイヤモンド半導体銘柄とは?

ダイヤモンド半導体 関連銘柄とは、人工ダイヤモンドを使用した”次世代パワー半導体材料”の製造、加工装置や工具、関連技術を開発・提供する企業のことです。
たとえば、人工ダイヤモンド種結晶を製造・販売をする国内唯一の専業メーカー「イーディーピー(7794)」、半導体用途のダイヤモンド材料で実績をもつ「住友電気工業(5802)」、ダイヤモンド工具・加工材料の最大手「旭ダイヤモンド工業(6140)」などがあげられます。
ダイヤモンド半導体 関連銘柄の代表例
| 銘柄名 / 証券コード | 特徴 |
|---|---|
| 住友電気工業(5802) | 世界有数の合成ダイヤモンド単結晶「スミクリスタル」を扱い、半導体用途のダイヤモンド材料で実績あり。ダイヤモンド半導体実用化の追い風となる企業。 |
| イーディーピー(7794) | 人工ダイヤモンドの種結晶製造・販売を行い、ダイヤモンド半導体材料段階において明確な技術を持つベンチャー/成長企業。 |
| 旭ダイヤモンド工業(6140) | ダイヤモンド工具・加工材料の最大手。半導体材料加工向けにも展開しており、テーマ株として名が上がる。 |
この他、関連銘柄についてはページ後半の「ダイヤモンド半導体関連株の一覧」で詳しくご紹介します。
“究極のパワー半導体材料”と称される「ダイヤモンド半導体」とは?
そもそも、ダイヤモンド半導体とは何か?どのような特徴を持つのか?
ダイヤモンド半導体とは、人工的に生成されたダイヤモンド結晶をベースにした半導体デバイスのことで、極めて高い熱伝導率と耐電圧性能をもち、電子の移動速度も高いことから電力効率に優れた高性能な半導体材料として期待されています。
さらに、放射線や高温環境でも安定動作するその特性から、宇宙開発や原子力分野など、過酷な環境下での応用も検討されています。
従来の半導体(Si、SiC、GaN)とダイヤモンド半導体の違い
従来の主流となっているシリコン(Si)半導体に比べ、ダイヤモンド半導体は「10倍以上の耐電圧」「20倍の熱伝導性」をもつとされ、省エネ性能や高出力対応において大きな優位性を持つとされています。
| シリコン | SiC | GaN | ダイヤモンド | |
|---|---|---|---|---|
| バンドギャップ | 1 | 2.9 | 3 | 4.9 |
| 絶緑破壊電界強度 | 1 | 9.3 | 16.6 | 33 |
| 熱伝導度 | 1 | 3.8 | 1.2 | 17 |
| バリガ性能指数 | 1 | 580 | 3,800 | 49,000 |
| ジョンソン性能指数 | 1 | 420 | 1,100 | 1,225 |
出展:佐賀大学研究発表「ダイヤモンド半導体パワーデバイスの出力電力・電圧の世界最高値を更新」
※バンドギャップ:電子が存在できない「禁制帯」と呼ばれるエネルギーの幅のこと
※絶緑破壊電界強度:絶縁破壊を起こす寸前の限界となる電界の強さのこと
※熱伝導度:物質がどれだけ熱を伝えやすいかを示す物性値のこと
※バリガ性能指数:パワー半導体材料の性能を評価する指標のこと
※ジョンソン性能指数:高周波・大電力デバイスを製造した場合に期待できる性能の目安
上記の性能比較にもあるように、ダイヤモンド半導体は次世代パワー半導体向けの素材(炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム)を凌駕する性能を秘めた「究極の半導体材料」といえるのです。
ダイヤモンド半導体の実用化はいつなのか?2025年以降の展望について
究極の半導体材料として注目を集めるダイヤモンド半導体。その実用化はいつになるのか?
実は、ダイヤモンド半導体の実用化はすぐそこまで迫っています。2025年の最新ニュースでは、半導体スタートアップの「大熊ダイヤモンドデバイス」が世界初のダイヤモンド半導体工場を福島県・大熊町に建設。量産化へ向けて2026年の稼働開始を予定しています。
ダイヤモンド半導体の研究・開発に関する最新ニュース
- 2023年、佐賀大学のグループが世界初となるダイヤモンド半導体パワー回路を開発。
- 2025年、産総研とホンダと共同でダイヤモンドMOSFET(金属酸化膜電界効果トランジスタ)デバイスを開発。アンペア級の高速スイッチング動作を世界で初めて実証。
- 2025年、北海道・産総研スタートアップ「大熊ダイヤモンドデバイス」が、世界初のダイヤモンド半導体工場を福島県の大熊町に建設すると発表。
実用化に向けては「ダイヤモンド基板の大型化」「高品質ウェーハの量産」「デバイス製造プロセスの確立」といった技術的ハードルが複数残っているものの、およそ、「2030年頃の量産化が見込まれる」との見通しが濃厚そうです。
ダイヤモンド半導体の実用化ロードマップ(2025年~2030年)
| 年度 | 主な動き(研究・製造) | 技術進展・社会的動向 | 投資観点での注意点 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | ・小型ダイヤモンド基板の試作加速 ・大学・研究機関による実証レポート活発化 | ・産学連携プロジェクト強化 ・一部メーカーが量産試験設備に着手 | ・初期段階のテーマ株として物色対象に ・報道ベースでの「思惑」先行 |
| 2026年 | ・100mm級ダイヤモンドウエハーの試験出荷 ・加工技術やMOSFET構造の試験実装 | ・EV・宇宙航空などでのピンポイント実証が進む | ・研究/装置/素材関連の中小型株に注目 |
| 2027年 | ・150mm級ウエハーの供給体制構築開始 ・デバイス製造コスト低減への技術改善 | ・技術特許の出願・取得が加速 | ・本命株の収益転換“前夜” ・提携/買収ニュースに敏感に反応 |
| 2028年 | ・一部産業用途での採用(EV、電力変換装置) ・製造歩留まり向上 | ・国際学会での発表やISO等の標準化検討開始 | ・材料・装置・電力応用の周辺企業が脚光 |
| 2029年 | ・300mm級ダイヤモンドウエハー技術の確立目標 ・量産前提の製造プロセス評価進む | ・国策テーマとしての位置付け明確化(補助金など) | ・本格採用期直前でバリュエーション再評価 |
| 2030年 | ・量産フェーズへの移行が現実に ・主要企業が出荷ベースで成果発表 | ・ダイヤモンド半導体搭載製品が登場(EV・鉄道・宇宙) | ・成長株→収益株への移行を占う重要な年 |
2025年現在、ダイヤモンド半導体の研究・開発が進められ実用化へ向けた動きが加速する中、関連銘柄の「先取り」という観点では今、本格的な物色が始まる可能性が考えられます。
さらに、国策テーマとしての追い風もあって材料次第で「ダイヤモンド半導体関連銘柄」の物色に拍車が掛かるとみていいでしょう。
ダイヤモンド半導体関連株の一覧
| 証券コード | 銘柄名 | 市場 | 業種 | 時価総額 |
|---|---|---|---|---|
| 1514 | 住石ホールディングス | 東証スタンダード | 鉱業 | 378億円 |
| 2962 | テクニスコ | 東証スタンダード | 金属製品 | 38億円 |
| 3446 | ジェイテックコーポレーション | 東証スタンダード | 金属製品 | 85億円 |
| 5381 | マイポックス | 東証スタンダード | ガラス・土石 | 67億円 |
| 5802 | 住友電気工業 | 東証プライム | 非鉄金属 | 46,858億円 |
| 6140 | 旭ダイヤモンド工業 | 東証プライム | 機械 | 414億円 |
| 6146 | ディスコ | 東証プライム | 機械 | 51,555億円 |
| 6158 | 和井田製作所 | 東証スタンダード | 機械 | 59億円 |
| 6166 | 中村超硬 | 東証グロース | 機械 | 31億円 |
| 6632 | JVCケンウッド | 東証プライム | 電気機器 | 2,200億円 |
| 6768 | タムラ製作所 | 東証プライム | 電気機器 | 433億円 |
| 7347 | マーキュリアホールディングス | 東証プライム | 証券・商品 | 183億円 |
| 7794 | イーディーピー | 東証グロース | その他製品 | 74億円 |
※2025年11月5日時点
ダイヤモンド半導体関連の本命株・思惑株
最後に、物色期待が深まるダイヤモンド半導体関連銘柄について、株式テーマをけん引する可能性を秘めた本命株、材料次第で物色対象と見られやすい思惑株をそれぞれご紹介します。
※ご紹介する銘柄は筆者の主観を含んだ内容のため参考情報としてご覧ください。
本命株【6選】
住石ホールディングス(1514)

出展:TradingView
住石ホールディングスは、石炭の輸入販売、人工ダイヤなどの先端素材の製造販売、岩石の採取・加工・販売を行う企業。九州を地盤とし医療・建設コンサルタントなどを手掛ける「麻生」が親会社。
グループ傘下の「ダイヤマテリアル」が工業用人工ダイヤモンドを製造・販売
ダイヤモンド半導体の分野では、グループ傘下の子会社「ダイヤマテリアル」が工業用人工ダイヤモンドの製造・販売を手掛けています。
2021年4月、佐賀大学の「嘉数誠教授」がダイヤモンド半導体を使った電力制御、変換を行う電子部品を製造し、世界最高レベルの出力電力を得ることに成功したと発表。この発表により、住石HDが手掛ける人工ダイヤが半導体製造装置向けに実績を有していると見られ、関連有力株として急動意。
半導体向け人工ダイヤの製造実績を有していることに加えて、過去に有力な関連株として思惑買いの対象と見られていたことから、住石HDはダイヤモンド半導体関連株の本命とみていいでしょう。
ジェイテックコーポレーション(3446)

出展:TradingView
ジェイテックコーポレーションは、主に放射線用X線ミラーと半導体などの次世代研磨装置の開発を柱とする研究開発型の企業。21年に子会社化した「電子化学」が半導体、液晶業界で使われる分析装置の販売、メンテナンス、分析を行っています。
ダイヤモンド基板を高速・高精度に平坦化する「プラズマ援用研磨(PAP)装置」を開発
ジェイテックコーポレーションの強みは、半導体ウエハー表面を平坦化させる独自の加工技術を持っていること。次世代の半導体ウエハー材料「SiC(炭化ケイ素)」や「GaN(窒化ガリウム)」をはじめ、極めて高い硬度をもつ人工ダイヤモンドにおいても、高速、高精度に平坦化する「プラズマ援用研磨(PAP)装置」を開発しています。
また、このPAP装置はすでに複数の半導体関連企業へ施策向け装置として納入が開始されており、ダイヤモンド半導体が話題になった際には株価が急反発した事例もあります。ダイヤモンド半導体の独自加工技術を有する「ジェイテックコーポレーション」も本命視できるでしょう。
住友電気工業(5802)

出展:TradingView
住友電気工業は、自動車・情報通信・エレクトロニクス・環境エネルギー・産業素材の主要5事業を展開するグローバル企業。自動車用ワイヤーハーネスで世界大手の一角で、創業から続く「電線」では首位の企業です。
世界有数の合成ダイヤモンド単結晶「スミクリスタル」を扱い、大学との共同研究で「ダイヤモンド基板上の窒化ガリウム(GaN)トランジスタ」の作製にも成功
2025年3月、住友電気工業は大阪効率大学と国立研究開発法人化学技術新興機構との共同研究プロジェクトにおいて、2インチの多結晶ダイヤモンド基板上で窒化ガリウムトランジスタの作製に成功したと発表。通信用基幹デバイスの大容量化と低消費電力化の実現に大きく貢献しています。
また、住友電気工業は世界有数の合成ダイヤモンド単結晶「スミクリスタル」を扱う企業としても有名で、半導体用途のダイヤモンド材料で実績も有していることもあり、ダイヤモンド半導体実用化の追い風となる企業として見られています。
ディスコ(6146)

出展:TradingView
ディスコは、半導体製造装置と精密加工ツールを開発・製造・販売する企業。とくに半導体ウエハを「切る・削る・磨く」といった精密加工の分野では断トツの世界シェアを占めます。これら精密加工装置と消耗品のダイヤ砥石が2本柱。
レーザーによるインゴットスライス技術「KABRA」を応用した「大口径ダイヤモンドウェーハ製造向けプロセス」を開発
ディスコは2024年5月、SiC向け・GaNウェハにも適用されてきたレーザーによるインゴットスライス技術「KABRA」を応用し、ダイヤモンドウェーハ製造向けの新たなプロセスを開発したと発表。従来のモノと比べて「経口が大きいウエハ加工に対応」「スライス時間が半分以下」といった、様々な制約をクリアする新たな技術を開発しています。
JVCケンウッド(6632)

出展:TradingView
JVCケンウッドは、日本ビクターとケンウッドの経営統合で誕生した音響・映像・無線機器メーカー。業務用デジタル無線機に強みをもち、無線システムと車載機器を主軸にする企業です。
ダイヤモンド半導体の社会実装へ向けて「佐賀大学」との共同研究を開始
JVCケンウッドは2025年4月21日、佐賀大学とダイヤモンド半導体の共同研究を始めると発表。佐賀大学はJVCケンウッドから研究支援を受け、JCVケンウッドは佐賀大学から主にマイクロ波帯、ミリ波帯通信用半導体の技術情報を受け取るとのことです。
佐賀大学といえば、世界初となるダイヤモンド半導体のパワー回路を開発したとして有名で、研究チームをまとめる「嘉数 誠教授」はダイヤモンド半導体の開発を担う新会社を設立するとも報道されています。JVCケンウッドと佐賀大学の共同研究が今後、ダイヤモンド半導体実用化へ向けてどのような動きをするのか注目して頂きたいです。
イーディーピー(7794)

出展:TradingView
イーディーピーは、人工ダイヤモンド種結晶(単結晶基板)を製造・販売する国内唯一の専業メーカー。人工宝石用の種結晶が主力ですが、近年では人工ダイヤモンドの特性を生かした半導体基板やヒートシンク、光学部品などの工業用製品も製造・販売しています。
半導体向け「1インチの単結晶ウエハー」を発売。12月には2インチウエハーを販売する計画。
ダイヤモンド半導体関連の本命株として以前から注目されているのが「イーディーピー」です。同社が手がける高品質な人工ダイヤモンドは、ダイヤモンド半導体の開発に欠かせない素材であり、大学・研究期間・大手企業への供給実績も豊富に存在します。
また2025年4月には、半導体向け「1インチの単結晶ウエハー」の販売を開始し、12月には2インチウエハーを販売する計画。さらに2029年には、4インチウエハーの製造を目指すとしており、半導体用途のダイヤモンドにとって最大の課題「大型化」を推進しています。
思惑株【4選】
マイポックス(5381)

出展:TradingView
マイポックスは、「塗る・切る・磨く」をコア技術とする総合研磨材メーカーです。研磨テープ・研磨パッド・液体研磨材の大手で、HDDや半導体ウエハ、光ファイバー向けを主力としています。
とくに、ダイヤモンドや炭化ケイ素(SiC)といった硬く加工が難しい素材の研磨に注力しており、2021年9月にはダイヤモンドウェーハのエッジ研磨加工サービスの提供を開始しています。
旭ダイヤモンド工業(6140)

出展:TradingView
旭ダイヤモンド工業は、切削や研磨に使われるダイヤモンド工具において国内首位の企業。電子・半導体、自動車・航空機、機械、石材など幅広い産業分野にて製品を提供しています。
パワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)向け工具やシリコンウェハー向けの超微細次世代ホイールといった製品を開発しており、硬く加工が難しいダイヤモンド半導体への応用が期待されます。
中村超硬(6166)

出展:TradingView
中村超硬は、ダイヤモンドや超硬合金などの高硬度材料の微細精密加工に強みをもつ企業。近年では、新たに半導体向け「ダイヤモンドワイヤ」を開発し、ゼオライト事業にも注力しています。
高硬度材料の精密加工に強みをもち、ダイヤモンドワイヤによるウエハの切断加工なども手掛けることから、ダイヤモンド半導体の加工装置、材料周辺として注目される可能性が考えられます。
タムラ製作所(6768)

出展:TradingView
タムラ製作所は、トランス・リアクタ・電源モジュールなどの電子部品、ソルダーペースト・ソルダーレジストなどの電子化学材料・実装装置、放送局向け音声調整卓やワイヤレスマイクなどの情報機器を開発・製造・販売する企業。
次世代パワー半導体素材として注目される「酸化ガリウム(Ga2O3)」の分野において、タムラ製作所からカーブアウトされたベンチャー企業「ノベルクリスタルテクノロジー」が有名ですが、佐賀大学との共同開発に成功した実績をもち、ダイヤモンド半導体の分野でも、技術支援パートナーなどの協力体制が作られるのではなにかと見られています。
まとめ:実用化が迫るダイヤモンド半導体!本命株を含む関連銘柄は要チェック!!
“究極の半導体素材“として注目が集まる「ダイヤモンド半導体」について、従来の半導体との違いや実用化へ向けた動き、また、ダイヤモンド半導体関連の本命・思惑株などをピックアップしてご紹介してきました。
ダイヤモンド半導体の実用化へ向けた動きは、2025年で「大熊ダイヤモンドデバイス」が世界初の工場建設に着手。着々と量産フェーズへの移行が現実味を帯びており、投資対象としては「初期段階の物色テーマ株の段階」に入りつつあります。
ご紹介した参考に、ダイヤモンド半導体の本命株、出遅れ物色が期待される思惑株のチェックにぜひ役立てて下さい。











「ダイヤモンド半導体株」について詳しく解説します。