2023年3月、東証がすべての上場企業に対して『資本効率の改善を要請』したのをきっかけに、大規模な自社株買いや増配計画を打ち出し「株主への利益還元を強化する企業」が増えています。
また、焦点となった『PBR1倍割れ問題の是正』によって、「業績は好調、しかしPBRは低い」といった企業が、どのような改善策で株価を引き上げるのか?その注目度は高いです。
こうした株式市場の大きな転機は、
『リスクを少なく長期保有の配当金狙い。』
『割安なときに買って値上がり益も狙いたい。』
このような”良いトコ取り”を狙う方にとって絶好のタイミングなのかも知れません。そんな方にオススメなのが「割安高配当株」です。
そこで今回は、配当利回りが高いのに割安な株価水準の銘柄、「割安高配当株」をテーマに、その魅力や注意点、指標をつかった見分け方などをご紹介します。またページ後半では、配当利回りと割安度に着目した【2024年版】割安・高配当株ランキングも掲載していますので、ぜひ最後までご覧になってください。
急動意が期待される必見の注目株とは?
割安高配当株とは?
割安高配当株とは、その名の通り「高い配当金を受け取れる企業なのに割安な株価水準にある銘柄」のこと。
たとえば、配当利回りの目安は一般的に「4%以上」とされていて、株価の割安度を測るPBRでは「1倍以下」が割安とみられています。つまり、配当利回りが4%以上でPBRが1倍を下回る銘柄のことを「割安高配当株」と見分けられるわけです。(あくまで一例です。見分け方についてはページ中盤でご紹介します。)
ではそもそも、「割安株」や「高配当株」にはどのような特徴があって、どうやって見分けるのか?それぞれ詳しくご紹介します。
「割安株」の特徴・見分け方
割安株とは、市場での評価が適正に反映しておらず、本来の企業価値よりも低い株価で取引されている銘柄のこと。バリュー株とも呼ばれています。
一般的に、割安株かどうかを判断する際には、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)といった株価指数で評価され、同業他社や市場平均と比較して下回っていると「割安」、上回っていた場合は「割高」と判断されています。
PER・PBRとは?

PER(株価収益率)とは、株価がその企業の1株当たり利益(EPS)の何倍に相当するかを示す指標のこと。株価を1株当たり利益で割ることで計算でき、このPERが低いほど割安、高いほど割高とされています。また、上場企業の平均的なPERが「15倍」であることから、「15倍未満であれば割安」「15倍以上であれば割高」と見られています。
PBR(株価純資産倍率)とは、企業の株価がその企業の1株当たり純資産(BPS)の何倍に相当するかを示す指標のこと。株価を1株当たり純資産で割ることで計算できます。また、PERと同じく、PBRも低いほど割安で高いほど割高とされていて、目安とされているのが「1倍」です。PBRが1倍以下であれば株価が純資産に対して割安とみられ、逆に高い場合は割高とみられています。
割安株の特徴やPER、PBRを使ったバリュー株の見つけ方など、下記のページに詳しくまとめています。ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。
CHECK!
東証改革で「PBR1倍割れ企業」に注目が集まる
ページ冒頭でもお伝えしましたが、東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」が発表され、とくに、
- 上場企業の多くで「PBR1倍割れ」が起きていること。
- 資本収益性や成長性の観点で問題があること。
などが指摘されました。異例ともいえる東証からの要請を受けて、市場では「低PBR企業の資本効率や収益性が改善する」といった見方が広がり、とくに「高配当&低PBR」の条件を満たす割安株に買いが入る事態となりました。
「PBRが1を割る(下回る)」とは、『企業が事業を継続するよりも解散して財産を株主で分けた方が価値が高い。』と評価されている状態です。2023年3月時点、プライム・スタンダード市場に上場する企業のうち、PBRが1倍を下回る企業は「約1800社」にも上り、これは、上場企業の約半数に相当する水準となります。この状態を東証が問題視したことから改善要請が発表されたという流れです。
「高配当株」の特徴・見分け方
高配当株とは、企業が株主に支払う配当金の割合が高い銘柄のこと。主に「配当利回り」や「配当性向」の割合などをみて「高配当株」と評価されています。
配当金とは、企業が出した利益の一部を株主に還元するお金のことで、持ち株数に応じて年に1回、もしくは2回に分けて支払われます。また、配当金の額は企業の業績によって変わり、その年に得た利益次第で「増配・減配」が行われたり、著しく業績が悪い場合は「無配(配当なし)」になったりします。
配当利回りとは?
配当利回りとは、株価に対する年間の配当割合を示す指標のことで、「1株当たりの予想配当金(年間) ÷ 現在の株価 × 100」で求めることができ、この割合が高いほど1株当たりに受け取れる配当金は高くなります。

高配当株とされる配当利回りの目安は「3%~4%以上」
一般的に、高配当株とされる配当利回りの目安は「3%~4%以上」とされています。
ただし、配当利回りは高ければいいというわけではありません。配当利回りが高すぎる銘柄は、何かしらの問題を抱えている可能性が高く、事業環境の大幅な変化で「減配」「無配」といったリスクがあるのに注意が必要です。
- 株価の大幅な下落によって配当利回りが高く見えている。
- 高い配当利回りを維持できるか不透明な場合がある。
- 特別配当や記念配当で一時的に配当利回りが高くなっている。
こうしたリスクを避けるために、配当利回りだけでなく「配当性向」にも目を向けます。
配当性向とは?
配当性向とは、企業が稼いだ利益のうち、どれくらいの配当金を株主に還元しているかを示す指標のことで、「配当金総額 ÷ 純利益 × 100」もしくは、「1株当たり配当金 ÷ 1株当たり純利益(EPS) × 100」といった計算方法で求めることができます。

たとえば、1年間の利益が3000万円だったとして、そのうち1500万円を株主に配当した場合、配当性向は「50%」になります。
配当性向の目安は「30%前後」
企業の熟成度合いによって株主に還元される配当の割合は異なりますが、一般的に配当性向の目安は「30%前後」が好ましいとされています。
先ほどの「配当利回り」と同じく、配当性向が高すぎる銘柄には注意が必要で、無理な配当金の支払いによって継続が難しくなる可能性が考えられます。また、業種、企業の成長ステージによっても配当性向は変わるため、業種ごとの傾向などを踏まえて判断するようにしましょう。
割安高配当株のメリット・デメリット
「割安株」と「高配当株」、それぞれの特徴が見えてきたところでココからが本題です。
当然のことですが、割安高配当株にもメリット・デメリットがあります。一番大きな魅力といえば「配当収入と値上がり益の両方を狙える」こと。一方で、銘柄によっては「減配のリスク」や「成長余地」が少ないといった短所も考えられます。
メリット | デメリット |
---|---|
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メリットとデメリット、それぞれを詳しく見てみましょう。
メリット
1. 配当収入と値上がり益の両方を狙える
割安高配当株の一番大きなメリットは「配当収入と値上がり益の両方を狙える」こと。
たとえば、一方は「配当狙いで持ちっぱなし」、もう一方は権利確定に向けた上昇に乗って「高値で売る」といった、投資戦略を分散させることができるわけです。
まず、配当利回りが高く、さらに配当性向が増加傾向にある企業は、好調な業績と利益成長が続いていることの現われ。株主還元にも積極的なので「安定した配当収入を高い水準で受け取る」ことができます。
さらに、高配当株は「権利付最終日」が近づくにつれて株価は上がり、権利落ち・権利確定日に急落するといった傾向があります。この値上がりの傾向を利用して、”割安なときに買って高値で売る”といった大きな値上がり益も期待できるのです。(ただし、配当金の受取りは見逃すことになります。)
2. 大幅な値下がりリスクが少なく金利の上昇局面でも魅力が残る
二つ目のメリットが「大幅な値下がりリスクが少なく金利の上昇局面でも魅力が残る」こと。
割安高配当株には、すでに成長を遂げた成熟企業が多く含まれ、本来の企業価値よりも低い株価で取引されていることから、単独での大幅な値下がりリスクが低いとされています。たとえば、銀行株や商社株、エネルギー関連銘柄などがこれにあたります。
また、金利の上昇局面において強みを見せるのがバリュー株(割安株)です。
金利の下落局面ではグロース株が相対的に強くなる一方、下落局面ではその割安感が好感され資金がシフトする傾向が強くなります。つまり、金利の上昇局面でも割安高配当株はその魅力を損なうことがないのです。
デメリット
1. 業績悪化や成長の停滞による減配のリスクがある
割安高配当株の大きなデメリットは「業績悪化や成長の停滞による減配のリスクがある」こと。これは、連続増配を続けてきた優良銘柄でも例外ではありません。
たとえば、高配当株として有名な「JT(日本たばこ産業)」。2005年から連続増配を続けてきましたが、2020年12月期通期の決算発表で、上場来初となる「減配見通し」を発表しました。
紙巻きタバコ市場の縮小と加熱式タバコの出遅れ、新型コロナ感染拡大の影響も相まって、21年12月期の決算が「減収・減益」の見通しとなり、年間配当予想を「前期比:24円減の130円」との見通しとなりました。(ただし、結果的に2022年には「188円」に増配、2024年は前期と同じ「194円」としています。)
2. 成長余地の少ない成熟企業の場合がある
デメリットの二つ目が「成長余地の少ない成熟企業の場合がある」こと。
先ほどの「JT(日本タバコ産業)」のように、成熟していながら長期的な事業の安定感がある銘柄は別として、割安高配当株の中には、売上や利益が伸び悩んでいる成長余地の少ない企業、つまり「業績の頭打ち」に陥っている企業も含まれます。
- 割安な株価水準:実は、適正な市場評価
- 配当利回りが高く配当性向も高い:成長への投資より利益の分配を優先
こうした状態だと注意が必要です。
大きな値上がり益の期待が薄いのに加えて、何かしらの悪材料によって業績の悪化が見られると値下がりリスクが高まり「減配のリスク」も強くなってしまいます。
“配当金&値上がり益”の両方狙える!割安高配当株の見つけ方
これまでご紹介してきた内容でも触れてきましたが、割安高配当株を見つけるには、「PER」や「PBR」、「配当利回り」や「配当性向」から評価するのが一般的な考えです。
ただし、単純に『配当利回りが高く割安な株価水準だから買い』とはなりません。
長期保有にも適していながら株価の上昇余地も期待できる銘柄を見つけるには、「業績の伸び」や「財務体質の安全性」にも目を向ける必要があります。
たとえば、以下のようなスクリーニング条件です。
- PER(予):15倍以下
- PBR:1倍以下
- 配当利回り(予):4%以上
- ROE:10%以上
- 経常利益変化率(3年前年度比):10%以上
【割安度】【高配当】【収益性】の3つに着目した見分け方をご紹介します。
①【割安度】予想PER:15倍以下・PBR:1倍以下

まず初めに、「PER」と「PBR」から、割安な株価水準の銘柄を絞り込みます。
- 予想PERの目安「15倍以下」
- PBRの目安「1倍以下」
2024年11月時点、この条件で抽出される銘柄は「368社」。「東証改革で「PBR1倍割れ企業」に注目が集まる」でご紹介しましたが、低PBR企業が今後、経営改善や株主還元の強化をどのように打ち出すのか?「株主還元の強化」という視点から物色してみるのもいいかも知れません。
ちなみに、PBRが1倍を下回る企業だけでみると「約1700社」が確認されています。
②【高配当】予想配当利回り:4%以上・配当性向:20~50%

①の条件に「配当利回り」を加えて、”割安”かつ”高配当”な銘柄に絞り込みます。
- 予想配当利回りの目安「4%以上」
- 配当性向の目安「20~50%」
この条件を加えて抽出される銘柄数は「101社」。ちなみに、配当性向はあくまで目安としてお考えください。「JT(日本たばこ産業)」のように、配当性向が50%超でも堅調な業績を維持している企業もあるためです。
③【収益性】ROE:10%以上・経常利益変化率:10%以上

最後に、収益性や財務体質の安全性という観点から「ROE」と「経常利益変化率」を条件に加えます。
- ROEの目安「10%以上」
経常利益変化率(3年前年度比)の目安「10%以上」
今回の条件では最終的に「27社」に絞り込むことができました。
実際にこれらの条件で試していただき、抽出される銘柄が少ない(多すぎる)場合には、条件を緩くしてみるなど調整してみてください。
【2024年版】割安高配当株ランキング
最後に、先ほどご紹介したスクリーニング条件をもとにした【2024年版】割安高配当株ランキングをご紹介します。順位は「予想配当利回りの高さ」を基準にしています。

【1位】マツダ(7261)
ランキング1位は、ロータリーエンジンの量産化でも知られる、中堅の自動車メーカー「マツダ(7261)」でした。
2024年3月期の1株当たり年間配当は「60円」、配当性向は「18.2%」という結果。また、集計時の予想配当利回りは「6.49%」となりました。
ただし、2024年11月に発表された連結業績予想では、国内・東南アジアでの販売が振るわず、見通しを下方修正する流れに。未定としていた期末配当予想を1株当たり「30円」とし、年間配当は「55円」の減配となりました。(減配は前期の特別配当「5円分」。)
1株当たり年間配当・配当性向の推移
決算期 | 年間配当 | 配当性向 |
---|---|---|
2021年3月期 | 0.00 | 0.0% |
2022年3月期 | 20.00 | 15.4% |
2023年3月期 | 45.00 | 19.8% |
2024年3月期 | 60.00 | 18.2% |
決算・業績推移
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 2,882,066 | 28,251 | 40.50% | -2.69% |
2022年3月期 | 3,120,349 | 123,525 | 43.80% | 6.57% |
2023年3月期 | 3,826,752 | 185,936 | 44.20% | 10.42% |
2024年3月期 | 4,827,662 | 320,120 | 45.80% | 13.07% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
【2位】神戸製鋼所(5406)
ランキング2位は、兵庫県神戸市に本社を置く大手鉄鋼メーカー「神戸製鋼所(5406)」でした。
2024年3月期の1株当たり年間配当は「90円」、配当性向は「32.4%」という結果。また、集計時の予想配当利回りは「5.76%」となりました。
2024年11月に発表された中間連結決算では、主力の鉄鋼事業での原材料高騰などが響き、経常利益・純利益ともに減益となる見通しを発表。ただし、年間配当は「90円」とは配当計画は維持するとのことです。
1株当たり年間配当・配当性向の推移
決算期 | 年間配当 | 配当性向 |
---|---|---|
2021年3月期 | 10.00 | 15.6% |
2022年3月期 | 40.00 | 25.0% |
2023年3月期 | 40.00 | 21.8% |
2024年3月期 | 90.00 | 32.4% |
決算・業績推移
決算期 | 上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 1,705,566 | 16,188 | 27.50% | 3.40% |
2022年3月期 | 2,082,582 | 93,233 | 29.90% | 7.88% |
2023年3月期 | 2,472,508 | 106,837 | 31.80% | 8.39% |
2024年3月期 | 2,543,142 | 160,923 | 36.20% | 11.12% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
【3位】フージャースHLDG(3284)
ランキング3位は、不動産大手フージャースグループの持株会社「フージャースHLDG(3284)」でした。
2024年3月期の1株当たり年間配当は「55円」と連続増配、配当性向は「47.1%」という結果。また、集計時の予想配当利回りは「5.86%」となりました。
1株当たり年間配当・配当性向の推移
決算期 | 間配当 | 配当性向 |
---|---|---|
2021年3月期 | 24.00 | 40.6% |
2022年3月期 | 36.00 | 40.4% |
2023年3月期 | 52.00 | 41.5% |
2024年3月期 | 55.00 | 47.1% |
決算・業績推移
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 自己資本率 | ROE |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 80,222 | 4,616 | 21.20% | 8.11% |
2022年3月期 | 79,542 | 5,692 | 24.40% | 10.21% |
2023年3月期 | 79,286 | 7,280 | 23.60% | 13.80% |
2024年3月期 | 86,418 | 7,599 | 23.60% | 13.06% |
※単位:売上高、経常利益「百万円」
まとめ
今回の記事は、割安な株価水準にありながら配当利回りが高い「割安高配当株」をテーマに、その魅力や注意点、各指標を活用したスクリーニング条件などをご紹介してきました。
いかがでしたか?
『リスクを少なく長期保有の配当金狙い。』
『割安なときに買って値上がり益も狙いたい。』
こんな方にとって、割安高配当株は魅力的に映ったのではないでしょうか。
割安高配当株の大きな魅力といえば「配当収入と値上がり益の両方を狙える」こと。一方で、銘柄によっては「減配リスク」や「成長余地が少ない」といったデメリットもあるため、割安度や配当利回りの高さだけでなく、「業績の伸び」や「財務体質の安全性」にも目を向ける必要があります。
ご紹介した”割安度”と”高配当”の見極めポイントやスクリーニング条件を参考に、いいトコ取りができる「割安&高配当」な有望銘柄をぜひ見つけてください。
「 割安高配当 株の見つけ方 」 について詳しく解説します。